昨日、私は会議のあとにラファエロと大神社展を観てきたのだが、今日はうちの長男が朝いちからラファエロに行き、大神社展に行き、ベーコンまで回ってきたのだという。
ラファエロについては意見が一致。観るべき作品はあれとあれとあれだったねと。馬、下手だったよねとか。そして大神社展では彼は銅鏡に心を奪われていた。そんな話をひとしきり交わし、しばらくたってから突然、ベーコン展で草間彌生と一緒になったんだ!と思い出して語り出した。
こんなすごいことを、なぜ、思い出して語り出すまであれだけの時間がかかったのだろう。
ベーコンはとても混んでいて、そこそこ途中までふいーっと回ったところで、人だかりをかき分けるように移動してくる車椅子に乗った赤いものが目に入ったのだそうだ。
赤い「帽子」(私のお帽子、といって彼女は頭に赤いのを装着するのだ…五年くらい前、ニヤイコールという草間彌生のドキュメンタリーを観てきた長男が一番最初に私に教えてくれた彼女に関わるエビソードがこれだった)を乗せ、赤地に大きな白い水玉柄のお洋服を着た彼女は、昨日見せたSPUR7月号の表紙と全く、寸分たがわぬ様子だったという。
「あのね、これだよこれ、ちっちゃいのこれのまんまだよ、こういう感じだよ」
と、長男は私のヴィトンの彌生ちゃんバックを指差して特に強調してこう言った。…長男は私のことを「ちっちゃい」と呼び(最初、ちっちゃいママと言っていたのが、名詞だけが落ちて形容詞が固有名詞化したのだ。我が母はおっきいママと呼ばれていてのちにお母さんに昇格し今に至る)私は未だかつて彼から母呼ばわりされたことが本当に一度もない。
途中から草間彌生と並んで移動していたという長男は、ベーコンの絵を観るたびに額のガラスに反射して彼女が映り込んだという。ベーコンと赤い草間彌生の共存を観る。それは、ものすごく劇的な、圧倒的な体験だったと思う。
はー、羨ましいことだ…。
草間彌生のあの猛烈な存在感を真横で捉えるなんて。ベーコンと共に。しかも、今の草間彌生は、慎吾くんと対談したあとの草間彌生なのだ。私にとって、それがどれだけ特別なことか、多分お兄ちゃんはわかってるはずだ。
いや全く、凄い体験だったよね。想像するだけで、めまいがしそうだもの。
この奇跡の邂逅が、彼に天啓をもたらしていることを私は信じるよ。おめでとう。この先さらにがんばってくれ。まずは25回目の誕生日直前の、修論中間報告会を乗り越えてくれ。大丈夫だよ、ベーコンと草間彌生を、レプリカとか印刷物とかの複製じゃなくて、本物に、同時に触れてきたんだから。もう、わけもなくそれだけで充分大丈夫だと私は思う。
ということで、私も彼の思い出し語りの恩恵に預かり、次男は隣りでぽかーんとこの話を聞きながら、いいなあ、いいなあと口を挟み、最後に(ベーコンじゃなくて)僕も大神社展に行きたいといって、長男はすかさず図録買ってこいと命じていた。
私はベーコンは行かないかなあ…と考えていたけれど、草間彌生も観たのか、と思いながらベーコンを観るのもすごくいい気がしてきたので再検討してみます。
ちなみに会田誠展は慎吾くんもものすごく熱心にゆっくり観ていたそうで、私はその一週間後に、+αな気分で会場を歩いたのだった。
いや。生きてるといろんなことがあるものだ。
…いいことも嫌なことも、振り幅が大きい方がいいのかもね。せっかく生きているんだからね。